研究概要 |
今回我々は肥満が妊娠母体および胎児に及ぼす影響を炎症性変化の関与という観点より明らかにするとともに、次世代への影響についてエピジェネティクス制御の視点よりヒトおよび高脂肪食摂取による肥満マウスモデルを用いた研究を計画した。 本研究を遂行するために、まず高脂肪食マウスモデルを確立した。本高脂肪食(high fat diet:HFD,60% of energy)摂取マウスでは、対照であるスタンダード食(normal chow diet:NCD)摂取マウスに比し、耐糖能が低下し、インスリン抵抗性(insulin resistance:IR)も高いことが判明した。またこれらのマウスを妊娠させると、HFD妊娠群はNCD非妊娠群よりも耐糖能が低く、IRが高くなることが確認された。本モデルの母獣の表現型として、脂肪細胞の肥大化を伴う脂肪量の増加、脂肪組織中のマクロファージ浸潤度の増加、炎症性のアディポサイトカイン(TNF-α,IL-6,MCP-1など)の血中レベルおよび脂肪組織におけるmRNA量の増加を呈した。一方、抗炎症性に作用するアディポネクチン発現低下を認めた。すなわち、妊娠マウスでは、非妊娠時の肥満マウスと同様、脂肪組織のマクロファージ浸潤の増加による炎症を介したアディポカインの発現調節異常が生じ、IRが生じることが示唆された。以上、母獣の表現型に関するデータを2つの英語論文としてまとめ、現在投稿中である。 一方、本モデルマウスの仔の検討も行った。本モデルでは、仔の発育は予想に反し、対照群と同様であることが判明した。しかし出生後の発育は、HFDの仔の発育が対照群に比し大きく子宮内の環境が出生後の仔の発育をプログラムした可能性が考えられ、本研究の目的であるエピジェネティクス制御に関し、次年度の研究を進めることが可能である。
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