研究概要 |
本研究の目的は、肥満が妊娠母体および胎児に及ぼす影響を炎症性変化の関与という観点より明らかにするとともに、次世代への影響についてエピジェネティクス制御の視点よりヒトおよび高脂肪食摂取による肥満マウスモデルを用いて検討することである。 まず、妊娠中に生じるインスリン抵抗性発現には非妊娠時と同様に脂肪細胞の肥大化とマクロファージの浸潤を介したアディポカインの発現変化が関与することが判明し論文発表した(Zhang L, Sugiyama T, et al.The inflammatory changes of adipose tissue in late pregnant mice. J Mol Endocrinol 47;157-165,2011)。さらに肥満妊娠ではそれら変化がさらに増強することにより、インスリン感受性組織における糖取り込み低下を介してインスリン抵抗性が増大する可能性を示唆した(Murabayashi N, Sugiyama T, et al.submitted)。 一方、上記検討において肥満・対照両群間で胎仔重量に差がないことも予想外であった。我々は胎仔のインスリン抵抗性の存在がHFDによる胎仔発育増進に歯止めをかけた可能性を考えている。今回の検討により、インスリン抵抗性は胎仔の脂肪細胞の肥大化やマクロファージ浸潤に伴うアディポカイン調節異常を介したGLUT4発現低下によるものと示唆された(Murabayashi N, Sugiyama T, et al.submitted)。 さらに次世代の検討においては、10週齢の時点で、HFD群の児は正常餌群に比し、血圧上昇、耐糖能低下(インスリン感受性は同等)を呈することより、エピジェネティックな関与の可能性を見出し、今後検討を加える予定である。
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