研究概要 |
アロマターゼ遺伝子の高発現は、子宮内膜症病変組織に高濃度エストロゲン環境をもたらす。私共は、その一因がエピゲノム制御の異常、とりわけDNAメチル化の異常に起因するとする仮説を提案している(Izawa et al. 2008, 2011)。本最終年度は、アロマターゼ遺伝子高発現とDNAメチル化との関連の分子基盤を解明すると共に、想定される子宮内膜症病変組織におけるDNAメチル化異常の網羅的ゲノムDNAメチル化解析の実施により、DNAメチル化異常の全容を検証することを目標とした。その結果、子宮内膜症病変組織におけるアロマターゼ遺伝子高発現を賦与するDNAメチル化異常の分子的背景と、子宮内膜症に特徴的なゲノムDNAメチル化異常の全容を明らかにした。これらの研究成果は、アロマターゼ遺伝子以外に子宮内膜症に特徴的なDNAメチル化異常を有する遺伝子が子宮内膜症病態の背景に存在すること初めてを明らかにした。この観察により、DNAの異常なメチル化が早期診断分子マーカーとなる可能性が示唆された。本研究の症例は限定的であり、症例を重ね検証する事が新たな研究課題となった。 (研究成果の概容) 1. 子宮内膜症細胞のアロマターゼ遺伝子第2エキソン上流の20kbに位置するCpG配列は、エンハンサー活性を有し、そのメチル化修飾はエンハンサー活性を抑制した。このCpG配列は、内因性のCpG結合特異タンパクにより認識され、試験管内では核抽出タンパク因子を配列特異的に認識し結合した。 2. 網羅的ゲノムDNAメチル化解析により、ヒトゲノム約480,000CpG配列より子宮内膜症に特徴的なCpG配列(Hypo-メチル化配列: 317、Hyper-メチル化配列: 657 )を抽出した。これらのCpG配列を有する複数の遺伝子において、DNAメチル化と発現に相関が見られた。現在、分子的背景を検討中である。
|