研究課題
1)胎盤特異的microRNAの同定と癒着胎盤における臨床的有用性に関する検討胎盤絨毛組織及び母体血液を一組として、妊娠初期および末期の計2組について、それぞれの検体よりtotal RNAを抽出した。それぞれの検体について次世代高速シークエンス法による網羅的解析を行い、母体血液では発現していないが胎盤組織では発現している上位10個のmicroRNA (miRNA)を胎盤特異的miRNAとして選択した。成績:妊娠初期の胎盤特異的miRNAとして、発現レベルが高いものから順にmiR-518b、miR-519a-2、miR-1323、miR-516a-5p、miR-517a、血R-515-5p、miR-512-3p、miR-516b、miR-520hおよびmiR-517cが同定され(最小値-最大値:16941リードー134590リード)、全て19q13.42領域(C19MC)に存在していた。妊娠末期の発現プロファイリングと比較すると、妊娠初期と末期の胎盤特異的miRNAはmiR-517c以外の9個は一致しており、いずれの胎盤特異的miRNAも妊娠初期から末期にかけて発現量が2倍以上に上昇していた(最小値-最大値:2.05倍-7.26倍)。結論:胎盤特異的miRAの発現プロファイリングは妊娠経過に伴いほとんど変化しないが、その発現量は妊娠経過とともに上昇していた。C19MCに存在する胎盤特異的miRNA発現量は、前置胎盤あるいは癒着胎盤を予測する指標になり得ると期待された。2)癒着胎盤の診断における術中超音波検査の有用性に関する検討前置胎盤38例に対して、帝王切開時に術中超音波検査を行った。従来の術前超音波検査に加え、帝王切開時にリニア型プローブでMHz以上の高周波を用いて術中超音波検査を行った。術中超音波検査により、全例に脱落膜の詳細な評価が可能であった。癒着胎盤であった症例では術前超音波検査よりも術中超音波検査のほうがより実際の所見を反映しており、術中超音波検査は前置胎盤における癒着胎盤の評価に有用と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度の研究目標は、1)胎盤特異的miRNAの同定と癒着胎盤における臨床的有用性に関する検討、および2)癒着胎盤の診断における術中超音波検査の有用性に関する検討であった、いずれの研究も平成23年度内に完遂され、妊娠初期および妊娠末期の胎盤特異的RNAのプロファイル及び発現量の推移を明らかにし、癒着胎盤における術中超音波検査の有用性が確認された。以上より、研究はおおむね順調に進展していると評価される。
平成24年度は、胎盤特異的cell-free miRNAマーカーセットの癒着胎盤への応用の可能性を前方視的に探る。具体的には、本年度も引き続き検体の集積し、母体血漿中への胎盤特異的RNA流入量を分子マーカーとして癒着胎盤をスクリーニングする。癒着胎盤のハイリスク群への術中超音波検査を施行し癒着胎盤の有無を評価し、分娩後の所見との対比からスクリーニングシステムの有用性を検証する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
Journal of Human Genetics
巻: 56 ページ: 296-299
巻: 56 ページ: 313-315
Journal of Obstetrics and Gynaecology Research
巻: 37 ページ: 1666-1670