癒着胎盤への臨床応用: 妊娠29-32週の母体血漿中におけるcell-free hPL mRNA流入量の上昇と前置胎盤との関連を検討したところ、子宮摘出が必要であった前置胎盤症例におけるcell-free hPL mRNA流入量は、子宮を温存することが可能であった前置胎盤症例におけるそれと比較して有意に上昇していた。前者はいずれも組織学的に穿通胎盤あるいは嵌入胎盤と診断された。すなわち胎盤特異的mRNAにも、癒着胎盤のために遺残した胎盤の状態を評価する、あるいは子宮摘出を必要とするような癒着胎盤を出生前に推定する分子マーカーとしての可能性が見出された。 胎盤特異的mRNAの同定:母体末梢血と胎盤組織を一組とし、Quiagen RNeasy kitを用いて抽出したRNAをジーンチップU133plus2.0 (Affymetrix)で解析した。そして、胎盤特異的mRNA50個が同定された。 胎盤特異的microRNAの同定: 母体末梢血と胎盤組織を一組とし、Human miRNA Microarray v2.0(Agilent)を用いて723種類のヒトmicroRNA (miRNAs)についてスクリーニングし、血液細胞と比較して胎盤組織で100倍以上のシグナル強度を認める82種類の胎盤特異的miRNAが選択された。そして、24種類の妊娠に関連した胎盤特異的miRNAが同定された。 癒着胎盤の推定について、胎盤における遺伝子発現状態を反映する胎盤特異的mRNAと遺伝子発現制御因子である胎盤特異的miRNAの双方を同時に評価することで、その精度を向上させうることが期待される。
|