AMPKを介する生理活性物質の産生調節に注目し、子宮内膜においてAMPKが細胞内情報伝達系とどのような相互作用を引き起こすか、さらにこれらの現象が妊娠維持や流産および不育症などの生殖現象にどのように関わっているかを調べる目的で検討を行った。 子宮内膜間質細胞を培養し、プロスタグランディン合成酵素(COX-2)の発現調節を検討したところ、interleukin (IL)-1によりCOX-2の発現がIL-1の時間的、濃度的に亢進した。培養上清中のプロスタグランディンをELISA法を用いて定量したところ、同様に産生量が増加した。次に、AMPKを活性化するとされているAICARをIL-1とともに時間的、濃度的変化を加えて添加したところ、IL-1により発現が誘導されたCOX-2は、AMPKの活性化により発現が低下した。また、培養上清中のプロスタグランディンも同様の変化を呈した。 これらの機序をさらに解明するため、IκB-NFκB系に注目し検討した。IκBはIL-1添加により5分後から活性化がみられた。これにAICARを添加しIκBの活性化を検討したところ、IL-1により活性化されたIκBはAMPKにより活性化が抑制された。 今回の結果から、COX-2はIL-1の刺激により、IκB-NFκB系が活性化され、NFκBが核内移行し発現が亢進するが、AMPKはこの部分を抑制することでCOX-2の発現を調節している可能性が示唆された。以上より、AMPKは炎症反応を負の方向に調節する働きを持つことが示された。
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