近年、胎盤に特異的に発現しているSyncytin-2の受容体としてMfsd2遺伝子が同定された。培養細胞にSyncytinを強制発現させることにより、本遺伝子には細胞融合を促す機能が判明し、この機能が胎児と母体間の物質交換を担う細胞表面の面積を大きくする事に寄与しているが明らかになった。 我々はMfsd2遺伝子の胎盤形成における機能解析を行うためにMfsd2 KOマウスを作成した。雄雌ヘテロマウスの交配により妊娠マウスを確認した後、胎性期18.5日目に胎仔および胎盤をそれぞれ識別した状態で摘出した。遺伝子型を決定した上で、研究分担者である片岡によりKO胎仔の病理学的検討を行った。胎仔および胎盤にも病理学的には明らかな異常所見は認めず、予想された胎盤形成不全の所見を認めなかった。現在、胎盤形成に関与するシグナル伝達系に異常をきたしている可能性を追求するために、胎盤形成関与各遺伝子群の免疫染色等を施行している。 出生マウスが成獣になっても小さい表現型を示す傾向があるため、その原因を追求する。成長ホルモンなどの内分泌的ホルモンシグナル伝達機構、骨代謝、性腺系の異常をきたしている可能性もあり、その検索も行う。 Mfsd2遺伝子KO胎仔線維芽細胞を用いたvitroの実験も平行して行う予定である。受動輸送体遺伝子の1つで何らかの糖輸送に関与していることが知られているために、細胞周期やアポトーシス刺激に対する感受性に正常マウスに由来する胎仔線維芽細胞と比較して差がみられるかどうかを検証する。また、RNAを抽出してアレイ解析も行う予定である。
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