研究課題/領域番号 |
22591837
|
研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
兼子 智 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (40214457)
|
キーワード | 品質管理 / 精子頭部空胞 / DNA損傷 / 顕微授精 / 染色体 |
研究概要 |
1.単一細胞DNAの2重鎖切断測定に際し、従来汎用されてきたComet法、DNA断片ゲル内拡散試験 (dispersion test)には実験条件の誤りがあり、さらに測定感度が低いことを明らかにし、投稿中(受理)である。核内でDNAを固定しているプロタミン、nuclear matrixの両者を酵素分解しないと偽陰性を生じる、非運動精子のほとんどはDNA切断陽性を示し、運動精子を選択的に分画して検査対象としないと、偽陽性を生じる。実験条件整備により、single cell pulse field gel electrophoresis(SCPFGE)の高感度化に成功した。これまで精子DNA損傷と受精障害、流産、先天異常との関連解析は上述したComet法、dispersion testにより検討されてきたが、両者ともDNA断片化が高度に進行した細胞を検出していた。臨床的には断片化の初期段階を観察する必要があり、再検討が求められる。 2.精子頭部空胞染色法は既に確立している。単一精子において、空胞を観察、記録した後、SCPFGEを施行し、空胞とDNA断片化の関連解析を行った。例数が少なく結論は出せないが、少なくとも一部の頭部空胞が確認された精子では断片化が認められ、両者に因果関係がある可能性が示唆された。さらに検討を続ける予定である。 3。SCPFGE後の泳動像におけるDNA fiber先端がテロメアを有する正常端であるか、切断端であるかを検討した。まずFISHによる検出の基礎検討を行った。検出に際しては立体障害によるプローブの結合阻止を防ぐことが、定量性確保の最重要点であることが明らかとなった。さらにFISHにおける加熱がDNA fiber切断を人為的に誘発することが明らかとなり、条件検討を行なっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単一細胞DNAの2重鎖切断測定に際し、すでに標準法とされているComet法、dispersion testの問題点を明らかにし、問題点を改良した新規測定法を確立できた。本法は単一細胞のDNA切断の初期段階を再現性よく観察できた。本法は放射線、化合物等のDNA毒性検出の基盤技術であり、普及を図りたい。
|
今後の研究の推進方策 |
精子頭部空胞出現率、精子DNA断片化陽性比率は個体差が大きいことが明らかとなった。染色体(DNA)を収納する精子頭部における異常構造がDNA損傷、ひいては流産、先天異常とどのような関連性を有するかは、不妊治療の安全性確保の根幹であり、次年度はこの点を重点的に検討する。
|