研究概要 |
子宮体癌においてリンパ節転移の有無は重要な予後因子であり,後腹膜リンパ節郭清は臨床進行期の正確な決定と術後補助療法の個別化に重要な役割を担っている反面,術後の後遺症をおこしうる.本研究の目的は,臨床パラメータに加えより正確にリンパ節転移を予測するため,子宮体癌リンパ節転移のバイオマーカーとなりうる遺伝子の検索を行うことであり,すでに選別されているKIAAI641/ANKRD36,VPS13A,CROP(cisplatin resistance-associated overexpressed protein),MALAT-1の4遺伝子が子宮体癌におけるリンパ節転移バイオマーカーとなりうるかについて臨床検体を用いて検証を行った. 平成23年度は初年度に施行した免疫染色を中心に検討を行った.抗ANKRD36ペプチド抗体と抗CROP抗体を用いて子宮体癌の原発巣とリンパ節転移巣の免疫染色を施行した(リンパ節転移陰性72例,陽性8例).ANKRD36はリンパ節転移陰性例中44例で陽性,28例で陰性であったのに比べ,リンパ節転移陽性例中8例すべてで染色性を認めた(P=0.045).また,ANKRD36陰性群と陽性群ではoverall suvivalに有意な差を認めなかった.CROPでは染色性とリンパ節転移状態との間に関連を認めなかった. また,MALAT-1に対するin situ hybridizationを施行し,MALAT-1が腫瘍組織に局在していることが判明した. 平成23年度研究の結果を総括すると,リンパ節転移を有する子宮体癌組織で有意にRNA発現が充進している4遺伝子のうち,子宮体癌組織におけるANKRD36タンパクとCROPタンパクの局在が証明され,non-codingRNAであるとされるMALAT-1の腫瘍への局在も確認された.
|