研究概要 |
(1)卵巣癌細胞のタキサン耐性に関与する分子の一つとしてclusterinに着目して検討した結果、(1)免疫組織化学的なclusterinの発現が早期卵巣癌患者において予後因子となりうること、(2)同一患者において原発腫瘍と再発腫瘍においてclusterinの発現を比較した所、抗がん剤に耐性を示した再発腫瘍においてclusterinの発現が高いこと、(3)clusterinに対するsi-RNAあるいはantisense oligonucleotideであるOGX-011の導入によりパクリタキセル(PTX)に対する感受性がPTX耐性卵巣癌細胞株で回復しうることが示され(Hassan MK,Watari H et al.,Journal of Experimental & Clinical Cancer Research,2011,30:113)、現在臨床試験によって他の癌種においてその有用性が検討されているOGX-011を卵巣癌のPTX耐性解除に適用するための基礎データが得られたと考えられる。 (2)PTX耐性卵巣癌細胞株において親細胞に比べて発現が有意に低下しているmicroRNAとしてmiR-31に着目して検討を進めている。PTX耐性株においてmiR-31発現ベクターを導入してmiR-31を安定的に過剰発現しているクローンを樹立した結果、miR-31の導入によってPTX感受性が回復すること、miR-31の標的分子の一つがレセプター型チロシンキナーゼのMETであり、miR-31の発現低下によるMETの発現充進がパクリタキセル耐性機構に関与していること、PTXとMET阻害剤を併用することでPTX耐性細胞に対する抗腫瘍効果が増強することが初めて示され、PTX耐性機構解除を目指したmiR-31の導入あるいはMET阻害剤の臨床応用に向けた基礎データが得られたと考える。
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