パクリタキセルに対する耐性を獲得した卵巣癌細胞ではmicroRNA (miR)-31の発現が低下しており、耐性株にmiR-31を強制発現することでパクリタキセルに対する感受性が回復することをMTT assayによって確認した。miR-31の直接の結合(標的)分子を同定するためにmiRの標的候補分子を検索できるデータベースを用いて検討した。その結果、標的分子の一つがレセプター型のチロシンキナーゼの一つのMETであること、si-RNAあるいはMETに対する特異的な阻害剤を併用することでパクリタキセルに対する感受性が耐性株で回復することをin vitroおよびin vivo(皮下腫瘍モデル)の実験系を用いて明らかにした。したがって、miR-31の発現低下によるMETの発現増加がパクリタキセル耐性機序の一つであることを示したものと考えた。パクリタキセル耐性卵巣癌細胞株を用いたin vivoの腹腔内播種モデルにおいては、パクリタキセルとMET阻害剤の併用によってパクリタキセル単剤に比べて有意に生存期間が延長した。卵巣漿液性腺癌患者の組織を用いた検討では、miR-31の発現とMETの発現との間に負の相関が認められた。さらに、miR-31の発現低下とMETの発現増加と臨床的な抗癌剤感受性との関連も確認され、miR-31の発現がパクリタキセルに対する感受性を予測するマーカーとなる可能性があると考えられた。
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