研究課題
アロマターゼは局所におけるエストロゲン合成のkey enzymeであり、その発現量は主にSF-1によって制御されている。これまでにSF-1プロモーター領域にCpGアイランドが密に存在すること、およびその領域で子宮内膜症においてメチル化されたDNAが高発現していることを確認した。また、SF-1プロモーター領域に存在するE-boxとその転写因子が子宮内膜症におけるSF-1過剰発現に深く関与することを報告してきたが、今回SF-1プロモーター領域近傍にSF-1発現を制御するエピジェネティックな機構が存在するに着目し、その領域の詳細な検討を試みた。正常子宮内膜ではSF-1プロモーター領域におけるDNAメチル化によりSF-1の転写が抑制されていたが、子宮内膜症組織では脱メチル化が高率で起こっていた。このことより転写が促進されSF-1が過剰発現していることが想定された。そのため正常子宮内膜細胞を用いて、脱メチル化を目的に5-aza-dC処理を行った。その後、real-time PCR法でSF-1発現を検討したところ、SF-1の発現量は10倍以上に上昇した。さらに子宮内膜症細胞に形質移入してルシフェラーゼ活性を測定したところ、-110/+239の領域でSF-1の発現が増強し、-65/+239の領域ではその増強効果が減弱することが確認できた。以上より-110/+239の領域に存在するCpGアイランドがSF-1の発現に強く関与していることが推察された。また、以前に同定した-82/-77領域に存在するE-boxもSF-1の発現には深く関与しており、その2つの機構が相乗的に関与して子宮内膜症におけるSF-1過剰発現を引き起こしていると推察された。
3: やや遅れている
研究計画にしたがい概ね研究が遂行できているが、子宮内膜症組織から初代培養した細胞は、継代に伴いその増殖能を急激に失うため、反復研究するために頻回に検体採取をする必要が生じた。そのため、当初の予定より、若干の遅れが出てしまった。
今後、子宮内膜症細胞を用いて、SF-1プロモーター領域のメチル化を行いSF-1発現量の変化を見る。併せて、SF-1の制御を受けるアロマターゼやStAR遺伝子の発現量変化も確認する。次に、メチル化の有無による細胞増殖能の差を検討すると同時に培養液中のエストロゲン産生量も微量測定(LC/MS/MS)法を用いて計測する。そして、最終的にはSF-1プロモーター領域のメチル化とSF-1プロモーター領域に存在するE-boxおよびその転写因子であるUSF-1およびUSF-2に関して総合的に検討し、正常子宮内膜に比し子宮内膜症におけるSF-1過剰発現のメカニズムを解明する。
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Tohoku J Exp Med.
巻: 229 ページ: 75-81
Int J Clin Oncol.
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