子宮頸癌の発症およびその不死化にはHPVの癌蛋白E6によるヒトの癌抑制蛋白のユビキチンプロテアソーム系による分解が深く関与している。このメカニズムをプロテアソーム阻害剤により遮断することにより子宮頸癌の進展を阻害できる可能性がある。近年のドラッグデリバリーシステムの進歩により、ミセルにこのプロテアソーム阻害剤を内包させることにより、薬剤の安定化とその効果の持続を試みた。MG132内包ナノミセルは主要組織への集積性を獲得し、その高い抗腫瘍効果が確認された。マウス移植腫瘍において、MG132内包ナノミセルはE6の分解の標的となる癌抑制蛋白の発現を回復することにより、抗腫瘍効果を示すと考えられた。我々は、プロテアソーム阻害剤であるMG132をナノミセルに内包化するシステムを東大工学部の片岡研と共同で開発した。ミセルの直径は約100nmであった。このMG132内包ナノミセルをもちいて、その血中での安定性を調べるために、ミセルに蛍光ラベルを付着させ、マウスの尾静脈から投与し、蛍光色素の発現を調べることにより、安定性を検討した。また、HPV18型陽性のHela細胞にGFPの蛍光を発現させた細胞をマウスに移植して、GFPを発現したHela細胞にミセル化したMG132が集積するかを、in vivo共焦点顕微鏡で証明した。また、移植した頸癌由来細胞の移植腫瘍がMG132内包ナノミセルにより著明に縮小することを示した。ミセル化したMG132は効率に腫瘍においてE6癌蛋白の分解の標的蛋白の発現を回復することにより、強い抗腫瘍効果がもたらされることが分かった。
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