研究課題
子宮頸癌の発症にはヒトパピローマウイルス(HPV)のE6およびE7癌蛋白による感染宿主であるヒトの癌抑制蛋白のユビキチン化を介する分解が深く関与している。E6癌蛋白はヒトの癌抑制蛋白p53を分解することでアポトーシス誘導の阻害により癌化に関わっている。この癌抑制蛋白の分解に関わる系を抑制する機能を持つものにプロテアソーム阻害剤がある。我々はプロテアソーム阻害剤であるMGI32内包のミセルによる新規ドラッグデリバリーシステムを開発した。また、E6癌遺伝子に対するsiRNAを同様にミセルに組み込むことに成功した。ヌードマウスの皮下に頸部腺癌から樹立されたHeLa細胞を移植し、マウスの尾静脈からMG132内包ミセルを投与し、ミセルの腫瘍集積性と抗腫瘍効果を検討した。また、子宮頸部腺癌の発生に関与すると考えられるHPV18型のE6遺伝子の発現を抑制し得るsiRNAをデザインし、そのE6遺伝子発現抑制効果を検討した。方法としては、E6により分解の標的となる癌抑制蛋白であるp53や膜に発現するhDlgやhScribの発現の上昇をウエスタンブロット法等で検討した。蛍光でラベルしたMGI32内包ミセルはヌードマウスの皮下に移植した頸癌の腫瘍に集積し、裸剤に比べ、強力な抗腫瘍効果を持つことが示された。投与したマウスの血中におけるミセルの安定性を調べたところ、裸剤のMG132に比べ、ミセル化したMGI32は長期にわたり、薬剤として安定であることが示された。HPV18型のE6遺伝子の発現を抑制し得るsiRNAをデザインし、HeLa細胞においてこのsiRNAをトランスフェクションしたところ、E6により分解の標的となる癌抑制蛋白であるp53や膜に発現するhDlgやhScribの発現の上昇をウエスタンブロット法や蛍光抗体染色により確認した。
2: おおむね順調に進展している
我々は既に全世界的にみても初めてプロテアソーム阻害剤であるMGI32のミセル化に成功した。このミセルを用いてマウスの子宮頸癌モデルにおいて、本薬剤が強力な抗腫瘍効果を持つことを示した。下記に記述するように本剤を用いて特許を取得した。
子宮頸部腺癌の発生に関与すると考えられるHPV18型のE6遺伝子の発現を抑制し得るsiRNAをテザインし、そのE6遺伝子発現抑制効果を検討しているところである。この新規のE6遺伝子をターゲットとしたsiRNA封埋ミセルが上述のMGI32封埋ミセル同様に高い抗腫瘍効果を示せば、新たな子宮頸癌の治療戦略の一つとなる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Reprod Biol Endocrinol
巻: 10 ページ: 14
22357324
Am J Surg Pathol
巻: 35(10) ページ: 1429-40
Br J Cancer
巻: 104(8) ページ: 1349-55