研究概要 |
我々はマイクロダイセクション法とマイクロアレイ解析を用いて子宮内膜癌で遺伝子発現が増強する因子としてlipocalin2(LCN2)を見出した。LCN2タンパク発現について検討すると、やはり正常に比べ内膜癌で発現が増強しており、組織学的Gradeや進行期が高いほど、発現が亢進していた。 さらに、高発現症例では生存期間短縮の傾向も観察された。子宮内膜癌細胞株Ishikawa, HECIBにLCN2発現ベクターを導入し、LCN2を強制発現させたところ、増殖能や浸潤能の増強が観察された。このようなことから、LCN2は子宮内膜癌の発癌進展に関与すると考えられた。 このLCN2の細胞表面受容体の一つとされるSL、C22A17タンパクの子宮内膜癌組織での発現を検討したところ、五CN2同様に組織学的Gradeや進行期が高いほど、発現が亢進しており、また、組織内での局在も、LCN2同様に浸潤部位や脈管侵襲部位で強い発現が観察された。また、LCN2と SLC22A17を高発現している子宮内膜癌細胞株HHUAで、LCN2とSLC22A17を免疫共沈したところ、両者が複合体を形成していることが確認された。このようなことから、LCN2はその受容体であるSLC22A17と強調して、子宮内膜癌の進展に関与していると考えられた。 一方、子宮内膜癌細胞HHUAにLCN2のsiRNAを導入したLCN2発現低下株を樹立し、各種ストレス(血清除去、UV照射など)を加えたところ、LCN2発現低下により、生存細胞数の低下が観察された。このことから、LCN2は癌細胞の生存能力の増強にも関与していることが考えられた。
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