研究概要 |
我々はエストロゲン受容体とインスリン発現の関係についてtransient transfectionによる解析を試み,エストロゲン受容体(ERα)がエストロゲン依存的にインスリンプロモーターの転写を抑制するという結果を得た。これらの事象がどのようなメカニズムで起きるのか解明することを目的とする。 これまでの実験結果より、ERαはエストロゲンに依存してラットインスリンプロモーター上転写開始地点より-238から-148bp上流に位置するE2regionに作用することがわかった。この部位には膵β細胞特異的転写因子であるPDX-1、BETA2/E47が関係することが知られている。エストロゲンの結合したERαはPDX-1、BETA2およびE47となんらかの相互作用をしている可能性がある。平成22年度の実績は以下の通りである。PDX-1、BETA2およびE47のそれぞれをGal4DNA結合領域に融合させたキメラ発現プラスミドを作成し、これらのキメラ蛋白の転写活性化能に対するERαおよびE2の効果をtransient transfection法を用いてHIT-15細胞において解析した。得られた結果からERαはE2存在下においてE47とは反応しないが、PDX-1、BETA2とは反応する可能性が示唆された。一方DNA結合領域に変異を起こしたERαとはPDX-1、BETA2は反応しなかった。そこでIn vitro pull down assayを行ったところ、ligand依存的にERαとPDX-1、BETA2が結合することが示唆された。現在はゲルシフトアッセイおよびチップアッセイの準備中である。妊娠後期や閉経後のようなエストロゲンが増減している状態、あるいはエストロゲン製剤を投与するような状況下でのエネルギー、糖代謝バランスを解析することは臨床上においても極めて重要なことと思われる。
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