研究概要 |
卵巣癌はその解剖学的位置から症状が発現し難く進行した状態で発見されるため,治療は手術療法に化学療法が併用されることが多い.様々な抗癌剤が開発され初期治療効果は挙がっているが薬物耐性を引き起こし再発,転移する症例は減少しておらず,未だ5年生存率は約40%である. 我々はこれまでに子宮内膜癌において抗癌剤cisplatinやpaclitaxelは核内受容体Pregnane X Receptor(PXR)のリガンドとなり薬物耐性因子(MDR1)を誘導すること,PXR発現を抑制するとcisplatinやpaclitaxel投与によりMDR1発現が誘導されず薬剤の癌細胞への効果が促進されるさとから,PXR-MDR経路を抑制することは薬物耐性を克服する一つの方法と考えられることを報告してきた.本研究では,予後の悪い卵巣癌でのPXRを介した薬物代謝調節機構を解明し,薬物耐性を抑制する遺伝子治療法の開発へと研究を進めていくことを目的としている. 平成23年度は、まず薬物耐性卵巣癌細胞を用いて薬物代謝、耐性制御機構におけるPXRの関与について研究を進めた.次にsiRNAを用いたPXR発現抑制による薬剤代謝や耐性への影響を検討した.異なる組織型由来の卵巣癌細胞におけるPXRおよびCYP3A4やMDR1の発現を検討したところ、抗癌剤cosplatinやpaclitaxelはMDRの発現を誘導し、細胞腫により誘導能は異なっていた.細胞増殖への影響もPXRの発現量や細胞腫により相違を認めた.RNA干渉法を用いてPXR発現を抑制することによりcisplatinやpaclitaxel投与によりMDR1の発現が誘導されず,薬剤の卵巣癌細胞への効果が促進された. 以上よりPXR-CYP3A4/MDR1経路はin vitro実験においても卵巣癌細胞で組織型や薬物耐性の有無などで異なった発現を認め、PXRを抑制することにより抗癌剤の効果が促進されたことから、薬物耐性の治療標的となり得ると考えられた.
|