卵巣癌は解剖学的位置から症状が発現し難く進行症例が多く,治療は手術療法に化学療法が併用されることが多い.様々な抗癌剤が開発され初期治療効果は改善しているが薬物耐性を引き起こし再発,転移する症例が多く,未だ5年生存率は約40%である. 我々は子宮内膜癌において抗癌剤cisplatinやpaclitaxelは核内受容体Pregnane X Receptor (PXR)のリガンドとなり薬物耐性因子(MDR1)を誘導すること,PXR発現抑制によりcisplatinやpaclitaxel投与によりMDR1発現が誘導されず薬剤の癌細胞への効果が促進されることから,PXR発現抑制が薬物耐性を克服する一つの方法と報告した.本研究は卵巣癌でのPXRを介した薬物代謝調節機構を解明し,薬物耐性を抑制する治療法を開発することを目的としている. 平成24年度は、薬物耐性卵巣癌細胞を用いて薬物代謝、耐性制御機構におけるPXRの関与やsiRNAを用いたPXR発現抑制による薬剤代謝や耐性への影響を検討した.異なる組織型由来の卵巣癌細胞において抗癌剤cisplatinやpaclitaxelはMDRの発現を誘導し、細胞腫により誘導能は異なっていた.細胞増殖への影響もPXRの発現量や細胞腫により相違を認めた.RPXR発現を抑制するとcisplatinやpaclitaxel投与によりMDR1の発現が誘導されず,薬剤の卵巣癌細胞への効果が促進された.更にヌードマウスの皮膚に卵巣癌細胞を移植し,その腫瘍組織へのsiRNA直接投与によりPXR発現が抑制され、腫瘍増大や抗癌剤投与による腫瘍縮小効果に影響を与えた. 以上よりPXR-CYP3A4/MDR1経路は卵巣癌細胞で組織型や薬物耐性の有無などで異なった発現を認め、PXRを抑制することにより抗癌剤の効果が促進されたことから、薬物耐性の治療標的となり得ると考えられた.
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