研究概要 |
卵巣明細胞腺癌(OCCA)は化学療法抵抗性,予後不良の上皮性卵巣癌である.我々はOCCAに特徴的に高発現するタンパク質としてannexinA4(ANXA4>を見出し,OCCAの臨床病理学的特徴の解明に寄与すべく研究を進めている.OCCAが発現するANXA4には等電点の異なる2種類のsubtypeが様々な量比で存在することを見出したことから,本研究では,subtypeの違いを切り口に,未だ明確にされていないOCCAにおけるANXA4の機能を解析することを目的としている.H22年度に,subtype存在比率の異なるANXA4を高発現するOCCA細胞株OVTOKO,OVISEを用いて,ANXA4 knock down(ANXA4_KO)安定株を用いた実験を行い,ANXA4_KOによる細胞増殖抑制効果,carboplatin抵抗性の改善効果,遊走・浸潤能抑制効果にsubtype存在比率が関与する可能性を示す結果を得ている.H23年度は,subtypeの構造差を解析すべく,薬物処理によって2次元電気泳動上での変化を検討する,また,臨床検体におけるsubtype差を解明する計画とした. 構造差に関して,リン酸化,リジン残基のアセチル化,もしくは,カルシウムイオン結合の相違によるものと仮定して,それぞれphosphatase処理,KDAC(リジン脱アセチル化酵素)阻害剤処理,EDTAによる2価陽イオンのキレート処理を行い,2次元電気泳動でsubtypeの存在比率を検討した.処理/非処理によってsubtype存在比率は変化せず,これら翻訳後修飾の関与は否定的である.導入したshRNAで分解されないANXA4発現vectorをANXA4_KO株に導入し構造差の再現性を検討中である. 外科切除したOCCAの凍結組織からタンパクを抽出し2次元電気泳動を行い,培養細胞株のみではなく実際の臨床検体でもANXA4のsubtypeが様々な比率で存在することを確認した.抗がん剤抵抗性,病期,予後などの臨床情報と比較検討したが,症例数が少なく有意な傾向は認めなかった.
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