研究概要 |
我々は造腫瘍能をもつラット子宮内膜細胞株を用いた実験でSP細胞はnon-SP細胞に比べてEMT誘導に関与する複数の増殖因子やサイトカインの発現が亢進していることを見出し、その一の精巣特異的発現遺伝子dbpC/contrinに着目し、子宮体癌の癌幹細胞形質獲得機構、転移浸潤能獲得について検討した。 1)内因性dbpC/contrinの発現のみられない子宮体癌細胞株Ishikawa(IK)細胞株にdbpC発現ベクターを形質導入し、過剰発現株(IK-dbpC細胞)を樹立した。2)IK-dbpC細胞の幹細胞マーカーALDH1の発現とフローサイトメトリーを用いて、side-population (SP)細胞の出現率を解析した。3)siRNAでdbpCの発現を抑制し、SP細胞の出現率とALDH1の発現の変化を解析した。4)Microarray解析を行い、dbpC発現細胞と非発現細胞間で発現量に差がある遺伝子群の解析を行った。 成績1) IK-dbpC細胞は幹細胞マーカーALDH1の発現が亢進し、約10倍のSP出現率をみとめた。dbpC−siRNAにより抑制するとSP出現率とALDH1の発現は低下した。2) IK-dbpC-SP細胞は長期増殖能を示し再解析により25%と高率のSP細胞の再出現を認めた。3) Microarray解析でIK-dbpc細胞ではTCA cycle, ATP synthesis、IK-dbpC-SP細胞ではInsulin/IGF, JAK/STAT, Interleukin signal pathwayに属する遺伝子群の発現亢進がみとめられた。また、精巣癌抗原(CTA)の一つの発現が約1000倍亢進していた。 結論1)dbpC/contrinは癌幹細胞の形質発現に関与する。2)発現が亢進している精巣癌抗原は癌幹細胞のマーカーになる可能性が示唆された。
|