研究代表者は構造的転写共役因子であるHMG(high mobility group)蛋白質ファミリーの蛋白質発現を免疫組織学的に検討してきた。その結果エストロゲン受容体の転写能をコントロールしているBAF57(BRG1-associated factor 57)の蛋白発現が、子宮内膜癌の独立した予後因子であること、また卵巣癌では明細胞癌に特異的に多量に発現していることがわかった。またmtTFA(mitochondrial transcription factor A)は、ミトコンドリアを場とした薬剤耐性獲得に重要な役割を果していると考えられているが、mtTFA高発現は子宮内膜癌予後不良因子であった。これらの研究結果は2010年Virchows Archに論文発表した。本研究ではさらなるHMG蛋白発現の検討、培養細胞株を用いBAF57並びにmtTFA発現をsiRNAでknockdownし、増殖能・抗がん剤耐性についての検討、卵巣癌・子宮内膜癌の腫瘍形成マウスでのsiRNAを用いた実験など行いHMG蛋白質ファミリーを分子標的とした子宮内膜癌、卵巣癌治療の可能性、またシスプラチンを中心とした薬剤耐性獲得機序解明を目的としている。 平成22年度は子宮内膜癌、卵巣癌について、当大学分子生物学教室にて作成されているHMG蛋白質ファミリーに対する多数の抗体をさらに免疫組織学的検討し婦人科悪性腫瘍における発現態度を検討した。その中でもT6蛋白は子宮内膜癌と予後との関係が指摘され、さらに研究を進めることを計画している。 また、p53蛋白質や細胞増殖のマーカーであるKi-67の免疫染色も同様に行いHMG蛋白質ファミリーとの関係を検討している。
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