研究概要 |
周波数弁別能の低下は、感音難聴患者が雑音によって音声聴取を著しく妨げられる大きな要因の一つである。中枢からtop-downに情報を伝える遠心性経路は、最も末梢レベルのオリーブ核蝸牛神経束以外は不明な点が多い。近年、遠心性経路の基点である大脳聴覚野の特定周波数領域を電気的に刺激することにより、聴覚野と同じ特徴周波数を持つ神経同調曲線のtipが鋭くなり、周波数選択性が改善する可能性が、下丘や蝸牛神経核の単一神経からの細胞外記録で得られた生理学研究で示唆されている。 1.今回、マウスの大脳聴覚野の周波数マップに基づいた特定の領域を電気刺激することにより、遠心性経路を利用した周波数選択性の改善が得られるかについて聴覚心理学的評価法であるノッチ雑音法を蝸牛複合電位測定に用いて検討し、感音難聴患者のより良い補聴に貢献する方法の基礎的に検討をめざす予備実験を遂行した。 2.CBA/CAJマウスを用い、蝸牛骨胞に小孔を作成し、同部より正円窓に設置した銀ポール電極より蝸牛神経複合電位(compound action potential;CAP)測定を行った。 3.CAPと心理物理学的な聴覚周波数分解能の測定方法であるノッチ雑音法(notched-noise method)を組み合わせた聴覚フィルタ形状の測定を行い、マウスの動物行動学的測定法で得られた聴覚フィルタの形状(Mayら,2007)と相関する結果が得られた。 4.ひき続き、老化マウスで周波数分解能の低下がみられるか検討中であるが、3/11に東北関東大震災のために動物の死亡とシステムの故障が生じ、再構築が必要となった。
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