前庭誘発眼筋電位検査(ocular vestibular evoked myogenic potential: oVEMP)は、2005年にRosengrenらが、音響刺激に対して前庭由来と考えられる反応が得られることを最初に報告し、新たな前庭機能検査として急速に広まりつつある検査である。本研究では、oVEMPの発生メカニズムを明らかにすることを目的として、モルモットよりoVEMPの記録を試みた。 記録の方法としては、モルモットの前頭部正中に皮切を置き、頭蓋骨を露出させ、骨導刺激器を頭蓋骨に直接当てることにより骨導刺激を行った。記録電極は、眼窩下面より関電極を挿入し、眼球下面の外眼筋近傍に記録電極を当て、不関電極をその約1cm下方の皮下に刺入することにより記録を行った。 昨年までの研究により、麻酔薬に筋弛緩作用のあるキシラジンを使用せず、ケタミンの単独麻酔とすることにより、刺激後3msecにピークをもつ陰性波の記録が得られた。この反応は、対側耳の破壊により振幅が減少し、さらに同側耳の破壊を行うことによって、反応が消失することから、この反応が内耳由来の反応であること、そして人間のoVEMPとは異なり、一部両側性の成分が混じっていることが判明した。 外科的に眼窩を一部開放することによって、下直筋と下斜筋を露出し、それぞれの筋より反応を記録し、この成分の由来となる筋反応について検討を行ったところ、下直筋、下斜筋のいずれでも骨導刺激に反応する成分が得られ、両側の前庭破壊によりこの反応は消失した。このことから、モルモットのoVEMPにおいては、下直筋と下斜筋の両方がその発生に関与していることが明らかとなった。
|