研究概要 |
当研究の目的は、c-junを特異的かつ効率的に抑制するsiRNAをマウス内耳に投与することにより、c-jun発現からアポトーシスに至るカスケードを抑制して、内耳を急性障害から防御するモデルを構築することである。平成22年度は騒音発生装置を作成し、CBAマウスを120dB SPL,4000-8000バンドノイズに2時間暴露する騒音性難聴モデルマウスを作成した。この騒音刺激は一時的な高度難聴(Temporary threshold sift : TTS)および永続的な感音難聴(Permanent threshold sift : PTS)を引き起こす刺激として確立されたものである。さらに内耳内でのc-jun発現を確認し、騒音暴露前、騒音暴露後に内耳でのc-jun発現のタイミングをQuantitative realtime RT-PCRで定量検討した。その結果蝸牛でのc-jun発現は騒音暴露直後にコントロール(騒音にさらされていない群)の3.85倍まで増加し、12時間以内にコントロールレベル(0.97倍)にもどる事がわかった。この検討により騒音暴露後の内耳でもc-jun発現を引き金とし、アポトーシスへ至るカスケード(JNK pathway)が活性化されることが確認されたほか、騒音暴露後のc-jun発現の時間経過を検討することにより、適切なタイミングでc-jun特異的siRNAを投与することが可能となった。すなわち、リポソームとして内耳に導入されたプラスミドベクターの効果は導入後72時間で最大となるため、まずプラスミドベクター投与後に騒音暴露をおこなってc-junの発現を検討する必要があることが判った。また平成22年度には内耳にc-jun特異的siRNAを投与するにあたって、c-jun特異的siRNAを発現するプラスミドベクターを構築した。このプラスミドベクターはマウスの細胞内でマウスU6プロモーターによりSmall hairpin RNA(shRNA)を発現し,shRNAはsiRNAへと分解される。siRNAがターゲットとするシークエンスは5'AAAGTCATGAACCACGTTAAC-3'であり、このsiRNAによりc-jun mRNAは効率的に分解される。
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