研究概要 |
今までの電気生理学的、薬理学的研究から内リンパ嚢はカテコールアミンのβ作用(β_2作用)を受けることがわかっていたが、アドレナリン受容体(AR)が内リンパ嚢のどこに存在するかは不明であったので、今回、RT-PCRおよび免疫組織化学的手怯によりラット内リンパ嚢におけるARの同定を行った。 laser papture microdissection (LCM)を使用して、内リンパ嚢上皮細胞のみを採取したサンプルのRT-PCRからはα_<1a>-,α_<1b>-,α_<2a>-,α_<2b>-,β_1-,β_2-,β_3-ARsの発現が認められた。免疫組織化学では内リンパ嚢上皮細胞(中間部)にはβ_2-AR,β_3-ARのみの免疫蛍光反応が観察され、β_2-ARはかなり強い反応が認められ、β_3-ARの反応はβ_2-ARより弱かった。内リンパ嚢上皮細胞(中間部)にβ_2-ARが強く検出されたことは、電気生理学的、薬理学的研究結果と一致するものであり、内リンパ嚢上皮細胞がβ_2-ARを介して、カテコールアミンの作用を受けていることをさらに補強するものと考えられる。 内リンパ系組織のひとつである蝸牛血管条ではβ_3-ARの発現は認められていないので、今回、内リンパ嚢上皮ではβ_3-ARが同定されたことは、同じ内リンパ系組織でも内リンパ嚢は蝸牛とは異なった機能を有している従来の考え方を支持するものと考えられる。
|