研究課題/領域番号 |
22591884
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
羽藤 直人 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (60284410)
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研究分担者 |
脇坂 浩之 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (30304611)
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キーワード | 顔面神経 / 顔面神経 / 神経挫滅 / マイクロアレイ法 / RNA解析 |
研究概要 |
顔面神経障害の程度や時期により表情筋の遺伝子発現に差があるとすれば、これを指標とした顔面神経麻痺の病態診断に応用できる可能性がある。本研究では、実験動物の顔面神経に「切断と挫滅」という2種類の障害を負荷し、その後に生ずる遺伝子発現の変化を経時的に観察した。実験動物には10週齢、雄のウィスター系ラットを用いた。右側の耳後部を切開して側頭骨外で顔面神経を露出、茎乳突口から約5mmの部位に次のいずれかの障害を加えた。すなわち、神経を完全に切断し末梢側を5mmにわたって切除した神経切断モデル(以下、切断群)と、マイクロ持針器を用いて10分間圧迫を加えた神経挫滅モデル(以下、挫滅群)の2種類を作製した。これらの処置後、経時的に眼瞼やヒゲの動きを肉眼的に観察し、表情運動の評価を行った。また、マイクロアレイ法を用いて顔面表情筋における遺伝子発現を検討した。その結果両群とも処置直後より眼瞼やヒゲの動きが消失し、完全麻痺を呈した。切断群では28日を過ぎても表情運動が回復しなかったのに対し、挫滅群は10日目頃より徐々に表情運動が回復し、平均17.6±2.8日で治癒に至った。マイクロアレイ解析の結果から、Myogenin、Vesicle-associated membrane protein 2、Insulin-like growth factor binding protein 6の3種のRNAを選択し、その発現を定量化した。いずれも、切断群での発現増加は挫滅群よりも著しく、7、14日目において統計学的に有意差を認めた。麻痺の予後は挫滅群の方が切断群よりも有意に良好であることから、遺伝子解析は予後診断に応用できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、顔面神経麻痺の障害程度、予後を予見するターゲットRNAの選定が進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
申請者はこれまでの研究で、ラットの顔面神経本幹に数秒から数分の圧迫を加えることで、程度の異なる顔面神経麻痺を100%の確率で発現するモデル動物の作製に成功している。本モデルの顔面神経障害程度は電気生理学的、組織学的に検討され、RNAの解析結果と比較検討することで、「どのRNAが神経障害程度の指標として適切か選択可能な状況にある。これまでの研究で、このラット顔面神経麻痺モデルを用いて神経障害程度と、RNA量が如何に相関するかを、絞り込まれた数種の候補RNAに関し経時的かつ定量的に解析した。その結果、myogenin(Myog:NM_017115.2)が最も有力な候補RNAであることが明らかとなった。平成24年度は、 1)抽出RNAに対する定量RT-PCR 2)in situ hybridization法によるターゲットRNAの局在部位の特定 を行う予定である。
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