顔面神経障害の程度や時期により表情筋の遺伝子発現に差があるとすれば、これを指標とした顔面神経麻痺の病態診断に応用できる可能性がある。本研究では、実験動物の顔面神経に「切断と挫滅」という2種類の障害を負荷し、その後に生ずる遺伝子発現の変化を経時的に観察した。マイクロアレイ解析の結果から、Myogenin、Vesicle-associated membrane protein 2 、Insulin-like growth factor binding protein 6 の 3 種の RNA を選択し、その発現を定量化した。いずれも、切断群での発現増加は挫滅群よりも著しく、7、14 日目において統計学的に有意差を認めた。麻痺の予後は挫滅群の方が切断群よりも有意に良好であることから、遺伝子解析は予後診断に応用できる可能性がある。特に Myogeninは反応特異性に優れていた。今後は、臨床応用を念頭に、研究を継続予定である。
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