蝸牛内グルコース輸送は、我々がこれまでに並行して研究し、解明した内リンパ電位産生の基礎的メカニズム成立のために必要不可欠な機構であり、本研究は蝸牛のホメオスターシス維持機構およびその障害による難聴発症機序の解明にきわめて重要であるものと考える。前年度に引き続きギャップ結合を介した細胞間グルコース輸送機構とその障害を、非代謝性蛍光グルコース誘導体6-NBDGを用いたグルコースイメージングにより細胞レベルで検討した。すなわち前年度はギャップ結合をもたないHeLa細胞にギャップ結合蛋白コネキシン26遺伝子をトランスフェクトしてギャップ結合を発現させ、非代謝性蛍光グルコース誘導体6-NBDGをマイクロインジェクションして隣接する細胞への蛍光の拡散を確認したが、今年度はさらにギャップ結合阻害剤ヘプタノールをメディウムに加え、細胞間グルコース輸送におけるギャップ結合阻害効果について検討した。その結果、ギャップ結合阻害剤ヘプタノール投与後は蛍光グルコースアナログの拡散は認められず、ギャップ結合を介した細胞間グルコース輸送をIn vitroで確認し、細胞間グルコース輸送におけるギャップ結合の重要性についての基礎的データとすることができた。また実験的内リンパ水腫モルモットの蝸牛管外側壁を用いて、グルコースイメージングによるグルコース輸送とその障害について検討するために、動物モデル作成にとりかかった。
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