目的:好酸球性中耳炎は治療に抵抗する慢性中耳炎/滲出性中耳炎であり現在のところ副腎皮質ステロイド薬の内服あるいは局所噴霧の有効性が報告されているが、有効性が低い症例も数多く存在する。近年、重症気管支喘息に対する抗IgE朗抗体(omalizumab)の有効性が証明され、実際の臨床現場での使用が認可されている。そこでこのomalizumabの重症好酸球性中耳炎及び合併する好酸球性副鼻腔炎に対する有効性を検討した。 対象と方法:対象は治療抵抗性の好酸球性中耳炎症例14例である。At randomに2群に分け、omalizumab投与群と対照群とした。omalizumab投与期間は3ヶ月とし、投与量は体重と血清IgE値から推奨される量を2週おきあるいは4週おきに皮下注射した。投与前後に耳症状、鼻症状、喘息症状をアンケート調査した。また好酸球性中耳炎に関しては、耳鏡所見と聴力検査、側頭骨CT所見でその有効性を判定した。好酸球性副鼻腔炎に関しては、鼻内視鏡所見と鼻副鼻腔CTで判定した。喘息に関してはピークフローを測定した。なおomalizumab投与群ではそれまでの喘息、好酸球性中耳炎、好酸球性副鼻腔炎に対する治療を継続した。対照群も同様に従来の治療を継続し、介入前後の症状、所見の変化を調査した。さらに前後で鼻汁及び中耳貯留液を採取し、種々のsurrogate markerを測定した。 結果:オマリズマブ群7例では全ての症例で喘息症状の改善、副鼻腔炎症状の改善を認めた。しかし内視鏡下の鼻内所見及び鼻副鼻腔CT所見では有意な変化は認められなかった。また好酸球性中耳炎に対しては症状、所見とも改善をみたのは3例であり、4例は有意な改善は認められなかった。対照群7例においては喘息、副鼻腔炎、中耳炎症状のいずれも有意な変化は認められなかった。さらに鼻汁及び中耳貯留液中の種々のsurrogate makerの変化を調べる予定である。
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