研究課題/領域番号 |
22591890
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 衞 東京医科大学, 医学部, 教授 (80116607)
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研究分担者 |
稲垣 太郎 東京医科大学, 医学部, 講師 (80366103)
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キーワード | 末梢性めまい / 半規管 / クプラ / ゲンタマイシン / 温度眼振反応 / 内耳障害 / 活動電位 / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
半規管クプラは、半規管膨大部に存在し、前庭眼反射を司る重要な平衡感覚器の一部であるが、構造自体が極めて脆弱であるため容易に形態的変化を蒙る。今回の研究によりクプラの障害が原因となる末梢性めまいと温度眼振の新概念を確立し、クプラ障害後の再生を応用しためまいの治療法確立をめざすのが目的である。 アミノ配糖体系抗生物質投与、内耳炎、膜迷路障害後のクプラの形態学的、生理学的変化については前年度で研究し、クプラの形態変化と感覚細胞の形態的・生理的変化について検索できた。前庭への血流障害は反復する末梢性めまいの主たる原因として以前から推察されていたが、実験で証明することは困難であった。平成23年度は血流障害後のクプラの変化と感覚細胞機能との関連を検索した。ウシガエル口蓋骨を除去して前庭動脈を露出する手技を開発した。これによって、前庭動脈が容易に同定でき、血流を遮断することができた。この方法は比較的手術侵襲は大きいが、3日あるいはそれ以上動物を生存させることができた。このようにある程度長期生存させることでクプラの変化と感覚細胞の障害を比較し、血流遮断によるめまいの病態の一端を解明するのが目的である。この動脈遮断により、半規管感覚細胞は容易に障害を受け、感覚毛や感覚細胞の変性、消失が起きることを光学顕微鏡で確認した。クプラ形態の詳しい観察には透過型電子顕微鏡が必要だが、資料の固定操作によってクプラは速やかに変性することが判っていた。前年度の実験で、資料の固定液の種類と濃度、固定時間、緩衝液の種類などを種々に変え、クプラの体積が約80%維持できる固定法を開発するに至っている。今年度の研究でこの手法がさらに確実になり、電子顕微鏡によりクプラの形態評価が効率よく行えるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は代表研究者がこれまで従事してきた研究の一環であり,実験技術の多くが確立したものであったので、効率よく実験を遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度では血流障害後のクプラの変化をも詳しく観察する予定であったが、少数の試料で観察できたのみで、クプラ自体の変化は軽微であった。次年度はまずクプラの変化をさらに詳しく観察し、感覚細胞の変化と比較検証したい。これはこれまでの研究経過から考えると充分達成できるものと考えている。さらにクプラの再生様式を検索し、めまいの治療としての基礎データとしたい。
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