研究課題
音声言語処理における視覚と聴覚の情報統合と、その過程に対する高度難聴の影響を評価するため、McGurk効果を用いた検査を行った。McGurk効果とは、話者の顔の動画と、実際の発声とは異なる音声を同時に呈示すると錯聴をきたす現象で、例えば「ガ」と発声している顔の動画に合わせて「バ」という音を呈示すると、多くの被験者には「ダ」と聴取され、「バガダ効果」とも呼ばれる。今回の研究では、単音節を発話している女性話者の顔の動きと音声をビデオ記録し、画像編集プログラムを用いて、顔の動きと音声を入れ替えたコンピュータファイルを作成し、人工内耳を使用している高度難聴小児と年齢をマッチさせた健常聴力小児にこの画像・音声をコンピュータディスプレーとスピーカーから呈示し、被験者が認知した音節との異同を調べた。通常、健常聴力者では小児より成人のほうがMcGurk効果が現れやすい。これは成人の方が、聴覚のみでは聴取しにくい状況で音声言語を聴取し、視覚情報を援用する経験・学習が多いためと推測される。一方、高度難聴小児では、人工内耳を介する語音弁別が良好な小児においても健常聴力小児に比して、視覚の影響を強く受けることが確認された。これは、人工内耳による語音の聴取では、健常聴力小児に比して聴覚のみでの語音弁別が困難な状況が多く、視覚との統合を要する機会が多いためと推測される。また、この検査を聴覚刺激に雑音を付加して語音聴取を困難にした条件で行うと、上記の傾向がさらに顕著となることも確認され、語音聴取困難な状況が聴覚視覚統合を促進するという仮説が支持された。この検査は、個々の難聴小児が音声言語によるコミュニケ―ションにおいてどの程度視覚の支援を必要としているのかを評価し、個々の小児に適した言語習得ハビリテーションプログラムを策定する際に有用な客観的情報を提供すると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (23件) (うち招待講演 6件) 図書 (4件)
耳鼻臨床
巻: 補132 ページ: 32-37
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業.優性遺伝形式をとる遺伝性難聴に関する調査研究平成23年度総括・分担研究報告書.研究代表者宇佐美真一
巻: なし ページ: 107-110
優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の診療ガイドライン(試案)2012.厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業.優性遺伝形式をとる遺伝性難聴に関する調査研究.平成23年度総括・分担研究報告書.研究代表者宇佐美真一
巻: なし ページ: 18-21
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業. Usher症候群に関する調査研究 平成23年度 総括・分担研究報告書. 研究代表者 宇佐美真一
巻: なし ページ: 54-58
音声言語医学
巻: 53 ページ: 138-143
日耳鼻 専門医通信
巻: 115 ページ: 562-563
日本耳鼻咽喉科学会会報
巻: 115 ページ: 849-901
Acta Oto-Laryngologica
巻: 132 ページ: 420-427
10.3109/00016489.2011.653442