研究概要 |
好酸球性副鼻腔炎および鼻茸において粘液分泌過多の機序を明らかにすることが本課題の目的である。平成22年度の計画は、気道上皮培養細胞を用いた検討と患者から提供を受けた試料を用いた検討とに大別できる。前者については、粘液を産生する培養上皮細胞において、さまざまなメディエータを単独あるいは組み合わせて粘液を産生する上皮細胞を刺激し、ムチン遺伝子MUC2およびMUC5ACの転写亢進の程度を、主にルシフェラーゼアッセイにて検討した。VEGF,IL-5はムチン遺伝子の発現を変化させなかったが、TGF-αは約3倍に、TNF-αは約7倍に増加させた。エンテロトキシンA単独ではMUC2,MUC5ACの発現には影響を及ぼさず、TNF-αと同時投与すると、むしろ抑制的に働いた。TGF-βは単独ではムチン遺伝子発現に影響を及ぼさず、TNF-αとともに用いても相乗作用はみられなかった。TGF-αとTNF-αの同時投与により約20倍に増加し、相乗作用が観察された。よって少なくとも粘液分泌には、TNF-αと好酸球由来のTGF-αの組み合わせが重要と考えられる。MUC2およびMUC5ACの遺伝子発現には、転写因子のNF-kBの活性化が重要であり、NF-kB特異的阻害薬のcaffeic acid phenethyl esterはNF-kBの活性化およびMUC2の転写を抑制した。TGF-αおよびTNF-αの作用の抑制が好酸球性副鼻腔炎などの好酸球性炎症抑制に重要だと思われた。一方患者から提供を受けた試料を用いた検討については、好酸球性副鼻腔炎患者において、TGF-αの染色性は上皮細胞、炎症細胞にみられ、健常者より増加している傾向を認めたが、TGF-βやTNF-αなどの他のメディエータに関してはまだ結果がでておらず、今後の検討としたい。
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