研究概要 |
本研究は好酸球浸潤を主体とする鼻副鼻腔炎病態における難治化過程の解析と、多機能分子である一酸化窒素(NO)濃度を指標とした新たな病態診断法の確立を目的としたものである。さらに臨床領域で治療薬の主体となっているステロイド製剤の作用機序と新たな治療法の開発に向けて、ステロイド受容体(glucocorticoid receptor, GR)を介した局所免疫応答の制御との関連性についても検討した。 本年度の成果の概要としては、 1)好酸球性副鼻腔炎に対するステロイド製剤の臨床的有用性の検証と、鼻腔NO濃度測定による治療効果の評価。好酸球性(ECRS)と感染型(non-ECRS)副鼻腔炎症例との比較では、Trans-AM assayによるGR全体の結合能には変化がないものの、GR beta/alpha陽性細胞の比率は篩骨洞粘膜を中心としてECRS症例で有意に高いことを解明した。同時にECRSでは局所のECP濃度が高値などの事実と併せて考えると、ステロイド受容体の結合能が相対的に不良であることを示している。また呼気中NO(FeNO)並びに局所NO(nasal and sinus NO)濃度の測定では、術前・術後並びに術後の治癒過程に応じて変動することが明らかとなった。引き続き局所NOS isoformの発現と局在との関連性を解析中である。 2)簡易型NO濃度測定モニタによるon-line法によるNO測定の臨床応用。鼻呼気NO測定法の開発と臨床的意義について一連の検討を行った。新たに発案したネブライザーノズルと定量吸引ポンプの使用により、nasal FeNO, sinus NOの簡便な測定と再現性が可能となった。Nasal FeNOを指標とした検討では、鼻アレルギー症例における有意な上昇、自覚鼻症状スコアと正の相関関係、スギ花粉症症例やレーザー手術施行例における経時followにも有用であるなどの点が明らかとなった。またこれらの測定値は呼気FeNOのものより統計学的により特異度が高いことが確認された。 3)副鼻腔炎組織の病理組織学的評価と分子生物学的解析:副鼻腔炎粘膜の病理組織所見を検討し、臨床背景とあわせて好酸球性副鼻腔炎の疫学調査を行った。
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