研究課題/領域番号 |
22591900
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
竹野 幸夫 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (50243556)
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キーワード | 一酸化窒素(NO) / toll like receptor (TLR) / NO合成酵素(NOS) / ステロイド受容体 / 呼気中NO濃度(FeNO) / 副鼻腔炎 / アレルギー性鼻炎 / 好酸球 |
研究概要 |
本研究は好酸球浸潤を主体とする鼻副鼻腔炎病態が臨床的に難治性であることに関する病態の解明と、多機能分子である一酸化窒素(NO)濃度を指標とした新たな診断法と効果的な治療法の開発を目的としたものである。本年度の成果の概要としては、 1)携帯型NO濃度測定モニタによる実地臨床における口呼気NO(oral FeNO)と鼻呼気NO(nasal FeNO)といった新しい炎症状態を評価可能な指標の確立。 我々が発案した鼻呼気用アダプタとの組み合わせでnasal FeNOの測定が可能となり、日本人における正常分布、鼻アレルギーや副鼻腔炎におけるcut off値の設定が可能かどうかなどの検討を行った。さらに鼻アレルギー症例における有意な上昇、自覚鼻症状スコアと正の相関関係、スギ花粉症症例やレーザー手術施行例における経時followにも有用であるなどの点を報告した。 2)好酸球性副鼻腔炎(ECRS)症例に対する内視鏡下副鼻腔手術の治療効果判定への応用。 薬物療法と手術療法それぞれにおいて前向きに継時的なFeNOのモニタリングを行った。その結果、手術症例においては術後口呼気NOの有意な低下と鼻呼気NOの上昇を確認した。FeNO値の測定は、治療に伴う副鼻腔粘膜の正常化と同時に、下気道病変の改善の評価を行う上でも有用な指標となりうることを報告した。 3)副鼻腔粘膜におけるNOS合成酵素発現の分子生物学的解析。 篩骨洞粘膜と鼻茸組織におけるNOS isoformとサイトカイン発現をreal-time PCR法と免疫組織学的に検討したところ、下鼻甲介粘膜に比較してiNOSとIL-5の有意な上昇をECRS症例で確認した。上記のFeNO値の変動には、ECRS自体が有する気道粘膜の過敏性と粘液線毛輸送機能の回復のプロセスが密接に関与している可能性を提示した。 4)定量吸引ポンプを用いた局所NOの測定方法の考案。より詳細に鼻腔各側や副鼻腔各洞のNO濃度の測定を目的とした技術を開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
鼻呼気用アダプタや定量吸引ポンプを考案できたため、今までにない鼻腔NO測定が可能となり、多くのデータを集めることが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
鼻腔NO測定が鼻アレルギーや副鼻腔炎の臨床診断や重症度の指標に応用可能であるか、臨床検査法として役立つものかどうかさらに症例数を積み重ねて検討する。 またNO代謝に深く関与している物質で、血管内皮障害などの観点から注目を集めているAsymmetric dimethylarginine (ADMA)などの上気道における発現や機能的意義についても検討する予定である。
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