研究概要 |
[背景]慢性副鼻腔炎の発症メカニズムあるいは少なくとも増悪因子として真菌が関与していることが示唆されている.また我々は真菌Alternariaがヒト分離好酸球に対して活性化および脱顆粒を直接誘導することを証明し,さらにAlternariaが分泌するAspartate proteaseがこの自然免疫反応の起因物質であること,好酸球表面に発現するProtease-Activated Receptor-2(PAR-2)を介してこれら免疫反応が惹起されていることを明らかにした.今回我々は真菌Alternariaに対する気道上皮細胞のサイトカイン・ケモカイン産生および細胞内カルシウムシグナルについて検討した.[方法]気道上皮細胞は、ATCCよりBEAS-2BおよびCalu-3を購入し使用した.刺激には真菌Alternaria culture extract(Greer Lab, USA)を使用しGM-CSF,IL-5,IL-6,IL-8,eotaxin,eotaxin-2産生および細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)の変化について検討した.[結果]Alternariaは、有意にGM-CSF,IL-6,IL-8を産生し,同時に[Ca2+]iの上昇を誘導した.これらの反応はPAR-2のアンタゴニストであるLSIGKVおよびAspartate proteaseのインヒビターであるPepstatin-A,ATBIなどにより有意な抑制効果を認めた.[結論]Alternariaが分泌するAspartate proteaseがPAR-2を介してヒト気道上皮細胞に対しGM-CSF,IL-6,IL-8産生を誘導し,好酸球炎症を増悪させる一因を担っている可能性が示唆された.Aspartate proteaseあるいはPAR-2をtargetとした新たな治療戦略の可能性が示唆された.
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