研究概要 |
糖鎖分解酵素であるxylanaseは喘息発症との関連が示唆され、とくにパン工場で働く労働者に喘息が多く発症することからBaker’s asthmaと呼ばれている。しかしxylanaseが免疫担当細胞を活性化するメカニズムは不明であった。我々はヒト分離好酸球に対し、微生物由来のxylanaseが活性化および脱顆粒をPAR-2を介して直接誘導すること明らかにした。喘息をはじめとするアレルギー疾患の発症や増悪に、微生物由来xylanaseに対する好酸球の自然免疫反応が関与している可能性が示唆された。 鼻茸や鼻副鼻腔粘膜に著明に活性好酸球が浸潤した副鼻腔炎は好酸球性副鼻腔炎と呼ばれその易再発性と喘息の難治化因子として注目されている。空中浮遊微生物である真菌および黄色ブドウ球菌由来エンテロトキシン(SE)がこれらの病態に関与している可能性が示唆されているが、どれだけimpactを与えているか不明であった。非好酸球性鼻副鼻腔炎、好酸球性鼻副鼻腔炎(ECRS)、アレルギー性真菌性副鼻腔炎(AFRS)、正常コントロールに対し、血清および局所粘膜(鼻茸、副鼻腔粘膜)中の総IgE値、真菌類(5種), 黄色ブドウ球菌エンテロトキシン(SE), HD, ダニ, スギ, ブタクサに対する特異的IgE値を計測し、局所ECP量との相関関係を検討した。また免疫組織学的にIgE陽性細胞の局在を検討した。副鼻腔粘膜(鼻茸)局所における総・特異的IgEの産生亢進は、AFRSのみならずECRSにおいても認め、それらは有意に局所ECP量と相関しており(真菌>ダニ>SE)、好酸球炎症を誘導している可能性が示唆された。IgE陽性細胞の多くは形質細胞と肥満細胞であった。難治性喘息に合併した好酸球性副鼻腔炎に対し抗IgE療法が有効との報告もあり、これら臨床報告を裏付ける結果と考えている。
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