研究概要 |
IgG4関連硬化性疾患は、全身の諸臓器にCD4ないしCD8陽性Tリンパ球とIgG4陽性形質細胞が浸潤する全身性疾患である。そのIgG4陽性形質細胞の浸潤は,膵臓、胆管、唾液腺、甲状腺、後腹膜などに認められることが多い。キュットナー腫瘍などの硬化性唾液腺炎、自己免疫性膵炎、原発性硬化性胆管炎、後腹膜線維症と独立して診断されてきた疾患は、この新しい疾患概念であるIgG4関連硬化性疾患の一つの表現型である可能性が示唆されている。診断は唾液腺、涙線などの両側対称性の肥大と血清中のIgG4の上昇あるいは組織中のIgG4陽性形質細胞の確認によってなされている。耳下腺、顎下腺など唾液腺の腫脹を初発症状とすることが多いが、膵臓や胆管に病変が進展し自己免疫性膵炎や硬化性胆管炎などの重篤な合併症をおこす可能性があり、早期に診断し治療を開始することが重要である。また、病理学的には腺組織の高度な破壊像と繊維化が認められており、この病態にはTh17細胞、Th1細胞とTh2細胞が関わり、繊維化にはペリオスチンやTGFなどのサイトカインや分子が関与していると推測される。本研究では、IgG4関連硬化性疾患の病態、特にTh17の関与および繊維化におけるペリオスチン分子の関与について検討した。その結果、IgG4関連硬化性疾患患者から得られた腺組織にはペリオスチンとIL-17の過剰発現が認められた。ペンドリンの発現は、対照と比較して減弱四ており、これは腺管構造の破壊に伴う変化と考えられた。これらの所見から、IgG4関連硬化性疾患の硬化にはペリオスチンとIL-17が重要な役割を果たしており、これら分子を標的とした治療法の開発が新たな道を開く可能性があると考えられた。
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