高齢者の睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)は認知症や不眠症、ひいては嚥下機能障害などの大きな原因にもなっている。わが国のSASに対する高齢者の疫学的な研究は欧米諸国と比較して非常に遅れている。また50歳台くらいまでで働き盛りの睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)の疫学的なDataは現在のところ良く知られているが60歳以上のSASにおける病態はあまり知られておらず、最近欧米では注目を集めてきているものの日本では実態調査が全く行われていない。よって今回我々は、人口約2万人で北海道の道南に位置し、人の移動が少ない八雲町において、60歳以上の高齢者におけるSASの実態を耳鼻咽喉科医からの視点をいれて疫学的に明らかにするために本研究を行った。平成22年度から平成24年までの3年間で北海道八雲町での1年に1回の耳鼻咽喉科地域検診と睡眠や眠気に対してのアンケート調査を行った。かつ簡易睡眠呼吸検査装置を常時準備し計測した。その結果は、八雲町の60歳以上の高齢者の睡眠時無呼吸は無呼吸低呼吸指数.が、10.6 ± 7.7回/hr であり、高齢者の数値として考えると病的というより加齢に応じた無呼吸が徐々に進行していると思われた。また睡眠の質の調査では昼間の眠気を表すJESS(ESS(Epworth Sleepiness Scale) 日本語版)は5.4 ±4.1 (男性 7.0 ±4.5 女性 4.1 ±3.3 P< 0.05)であり女性の方が男性より有意に眠くないことが示された。さらに入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒についても調べてみた結果、入眠障害や中途覚醒よりも、より早朝覚醒での訴えが多かった。これらは都会型の高齢者のパターンとは違い、農業・漁業など1次産業にかかわる地方での 高齢者の睡眠パターンと考えられた。
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