研究概要 |
当該年度の研究計画で挙げていた項目の内、頭頸部癌細胞株YCU-H89を用いた実験系でEGFRの内在化を確認する実験を行った。その結果、生理的なリガンドである上皮細胞増殖因子(EGF)による上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の内在化を蛍光顕微鏡を用いて確認する条件を設定することができた。複数の細胞株での条件設定を検討するため、他の細胞株(DaFu,Cal27)でも検討を進め、内在化を確認したが、染色状態が不安定で再現性が乏しいことが判明したので、YCU-H89を用いて以後の実験を進めることとした。 本研究で注目しているメカニズムは、EGFRの内在化によってEGFなどの細胞外のリガンドとの結合が阻害される点である。そこで、EGFによる内在化をコントロールとして、既に内在化を起こす可能性が示唆されている物質である緑茶カテキンの一種である天然ポリフェノール(-)-Epigallocatechin gallate(EGCG)によるEGFR局在への影響を検討した。その結果、YCU-H861細胞で、EGCGによるEGFRの内在化が観察された。YCU-H861細胞でもEGCG前処理により、細胞増殖は阻害され、かつEGFRのEGFによる活性化も阻害されることが確認されているので、このEGCGによる内在化はEGFによるEGFR活性化を阻害するメカニズムであることを強く示唆するものであると考えられた。 この条件下で、srcファミリー蛋白の関与を検討する為に、まず局在をみる実験を行った。SrcファミリーはEGFによって活性化することが知られているが、EGF処理では、蛍光顕微鏡下に観察されるc-srcの局在には変化が見られなかった。Src(ファミリー)蛋白の活性化が、EGFRの内在化に重要である可能性があるので、次年度の研究でsrcの活性化について検討を加える予定である。
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