研究概要 |
1.頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)細胞におけるE-cadherin(E-cad)およびその転写抑制因子(SIP1,snail,twist)の発現をreal-time PCRにより定量した結果,SIP1のみがE-cadと有意に逆相関した。StageI-II舌癌部分切除標本における発現を免疫組織化学的に検討した結果,後発性リンパ節転移の独立予測因子は多変量解析にてSIP1発現亢進,E-cad発現減弱,血管侵襲と考えられ,原発巣癌細胞におけるEMT誘導の深い関与が示唆された。 2.乳癌細胞MCF-7においてAng2は,ILK-AKT-Bcl-2 pathwayの活性化によるアポトーシス抑制を介し転移巣での初期増殖能とcell survivalを増強させることで,転移能を亢進させることが解明された。 3.SIP1低発現HNSCC細胞に,E-cad転写抑制因子のSIP1 cDNA expressio nvector (SIP1/pSecTagB/Myc-His(+))およびnuclear-localized GFP cDNA expression vector(H2B-EGFP/pcDNA3)を用いてEMT誘導因子であるSIP1のtransfectionを行い,SIP1強発現HNSCC細胞を樹立中である。 4.HNSCC細胞における選択的Cox2阻害剤(Celecoxib,NS-398,SC-791)によるE-cad発現の変化をreal-timePCRおよびFACSで定量した結果,E-cad低発現細胞では発現増強を示したのに対し,E-cad高発現細胞ではその変化は微弱であった。Cox2阻害によるE-cad発現増強は転写抑制因子SIP1,snail,twistの発現抑制を介していた。Cox2選択的阻害剤はHNSCC細胞のE-cad発現亢進を介してその運動能も抑制することで抗腫瘍効果を導く可能性が示唆された。
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