研究概要 |
本研究は、頭頸部癌における独自のマイクロRNA(miRNA)発現プロファイルをもとに、治療標的として有用な疾患特異的miRNAsを、臨床情報が管理された豊富な臨床検体を用いて解析・選定し、頭頸部癌の新規治療システムを構築することを目的としている。 3年計画の1年目である本年度は、治療標的を絞り込むため、これまでのマイクロアレイ解析で疾患に特徴的な発現傾向を示したmiRNAsにつき、多検体で定量的に発現を解析した。まず同一患者の非癌部分と癌部分での発現量を5組で比較し、4つのmiRNAsの発現量が有意に異なることをつきとめた。 これらのうち、(1)良性疾患、(2)前癌病変、(3)癌の3群における発現量の比較で、(1)と(3)ならびに(2)と(3)で有意差を認めたmiR-196aを有望な標的候補と考え、91検体で解析した。その結果、早期癌(T1-T2)と進行癌(T3-T4)、さらに前癌病変(dysplasia)と極めて初期の癌(T1a)のいずれの比較でも後者で有意に発現増加を認め、miR-196aの疾患バイオマーカーとしての有用性、疾患の進行との関与、治療標的としての可能性が示唆された。下咽頭癌及び子宮体癌においてもmiRNA発現プロファイルは疾患に特徴的であり、このことはmiRNAsが疾患特異的なバイオマーカーとなり得ることを支持した。さらに、組織検体を用いた27,578か所のCpGサイトのメチル化状態の解析の結果(illumina Human Methylation27)と併せ、喉頭癌では11のmiRNAsの発現に、それら近傍のゲノム上メチル化制御が関与している可能性をつきとめ、miRNAsのエピジェネティックな発現制御機構の一端を明らかにした。 なお、関東労災病院、ケアタウン小平クリニックの2施設が新規参画し、共同研究先が5施設に増えたことは、解析結果に普遍性を増し、今後の研究の質を向上させる。
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