研究課題/領域番号 |
22591922
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
池田 稔 日本大学, 医学部, 教授 (30130420)
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研究分担者 |
高尾 恭一 日本大学, 医学部, 助手 (90187922)
小野田 恵子 日本大学, 医学部, 兼任講師 (00349995)
関根 大喜 日本大学, 医学部, 助手 (10398860)
出中 真琴 日本大学, 医学部, 助手 (00526121)
平井 良治 日本大学, 医学部, 助教 (70409027)
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キーワード | 舌 / T2R / 自発性異常味覚 / 薬剤性味覚障害 / 亜鉛欠乏 |
研究概要 |
これまでに得ている重要な結果を下に示す。 1.24例の健常者の舌から採取した検体を用いて、予定通り10個のT2R味覚受容体遺伝子の発現を検討した。健常者において10遺伝子のうち6種類の受容体遺伝子の良好な発現を認めた。一方、残りの4遺伝子の発現は比較的低率であった。 2.同様の味覚受容体遺伝子の発現を40例の味覚低下症例で検討した。その結果、健常者で発現の高かった6遺伝子において味覚低下例での有意の発現率の低下がみられた。味覚受容体遺伝子の発現低下は、味覚低下の発症機序に重要な関連性をもつものと思われた。(英文誌に報告した) 3.自発性異常味覚の43症例で味覚受容体遺伝子の発現の変化を検討した。健常者では発現が低率であった3つの遺伝子の発現率が、自発性異常味覚の例では有意に亢進していた。通常は発現の乏しい遺伝子の発現亢進が、自発性異常味覚の発症機序に何らかの関与を示しているものと思われる。(英文誌に報告した) 4.薬剤性味覚障害と味覚受容体遺伝子の発現を検討するために、抗腫瘍薬を使用している3名の患者から組織採取を行い、現在検討を進めている。本研究項目は患者の協力が極めて得にくいため、現在はラットに抗腫瘍薬を投与して舌における受容体遺伝子の発現の変化を検討している。 5.亜鉛欠乏はヒトにおける味覚障害の重要な原因となる。現在その機序としての味覚受容体遺伝子の発現変化を、亜鉛欠乏ラットを作成して厳密な検討を行っている。いくつかの遺伝子の発現に亜鉛欠乏と亜鉛投与が有意の影響を与えることが認められており、ヒトの亜鉛欠乏性味覚障害の発症機序の解明に有用な結果が導かれるものと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者24例から得た舌のサンプルを用いて味覚受容体遺伝子の発現を検討することができた。また、味覚障害のうち、臨床検査の十分施行された味覚低下例40例から、また自発性異常味覚例43例から舌のサンプル採取が行われ、味覚受容体遺伝子の発現状況を検討することができた。これらはすでに英文論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
味覚障害の原因として、味覚受容体遺伝子の発現変化が影響している可能性が確認された。残る検討は、味覚障害の原因別に受容体遺伝子の関与をみてゆくことである。一つは、亜鉛欠乏はヒトの味覚障害の重要な原因となるため、亜鉛欠乏性味覚障害の発症機序における味覚受容体遺伝子の役割を解明することである。その厳密な検討のために亜鉛欠乏ラットを作製して味覚受容体遺伝子の発現変化の検討をすすめている。また、薬剤性味覚障害と味覚受容体遺伝子の発現を検討するために、抗腫瘍薬を使用している3名の患者から組織採取を行い、現在検討を進めている。本研究項目は患者の協力が極めて得にくいため、症例の蓄積が大変困難である。現在はラットに抗腫瘍薬を投与して舌における受容体遺伝子の発現の変化を検討している。
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