白血球接着分子Vascular Adhesion Protein(VAP)-1は多様な疾患に関わっていることが知られており、腫瘍性病変ではその発現量と生命予後の関係が注目されている。しかしながら、眼科領域における腫瘍性疾患とVAP-1との関連は現時点で不明である。本研究計画は、免疫組織学的手法、分子生物学的手法を用いて眼窩腫瘍におけるVAP-1発現を定量し、VAP-1発現と眼窩腫瘍の悪性度(転移率・再発率)および生存率との関連性を検討することを目的としている。 本年度は、年度計画の主な項目である「眼窩腫瘍組織の検体採取」に主眼をおいておこなった。しかしながら、本研究計画が追加採択となったこと、そして眼窩腫瘍が元来稀な疾患であることから、現時点での検体数は4例となっている。今後さらに検体数を追加する予定である。 現時点で検討可能である組織切片を用いて免疫染色をおこなったところ、1)正常結膜組織ではVAP-1発現は認められない、2)結膜悪性リンパ腫では血管組織にVAP-1が発現している、3)化膿性肉芽腫では、血管組織にVAP-1が強発現している、という結果が得られている。今後は検体数増加が見込めること、また免疫染色以外の手法による発現解析もおこなうこと、臨床データを用いたレトロスペクティブな検討をおこなうことなどから、さらに各眼窩腫瘍におけるVAP-1発現に関する知見が得られるもの考えられる。
|