研究概要 |
日本人における緑内障感受性遺伝子同定のために、一塩基多型を用いたスクリーニングを行った。 1)常染色体2番のGLC1B領域近傍(72~116Mb)のスクリーニングを行った。開放隅角緑内障 (POAG)に関しては、膜貫通型TMEM182遺伝子が病型と相関していること、正常眼圧緑内障(NTG)に関しては、ミトコンドリアでの糖代謝に関係するHK2遺伝子が相関していることを明らかにした (PLoS ONE, 2013)。 2)緑内障のPOAG, NTG, 嚢性緑内障(XFG)病型毎の表現型とToll like receptor 4(TLR4)遺伝子の相関を解明した。TLR4は外因性・内因性のリガンドに対して免疫応答を担う膜貫通型受容体で、熱ショック蛋白と相互作用をもつとされる。TLR4遺伝子上の8つのSNPをスクリーニングし、3つの緑内障病型と相関することを示した(Am J Ophthalmol, 2012)。 3)嚢性緑内障(XFG)は、失明になりやすい緑内障であり手術介入をしても予後は不良である。神経ペプチドCNTNAP2遺伝子をスクリーニングし、落屑緑内障と相関することを明らかとした(Mol Vis, 2012)。 また、動物モデルはヒトの病態の解析にたいへん有用な場合があり、今回モデルマウスに着目した。グルタミントランスポーターであるGLAST欠損マウスは、眼圧が正常でありながら視神経乳頭陥凹を示し、GLAST遺伝子はNTGの候補遺伝子である。今回GLASTにアミノ酸変異を伴う症例を同定し、変異によってグルタミン酸取り込み能が低下していることを示した(Nature Medicine投稿中)。しかし必ずしもマウスとヒトの病態が分子遺伝学的に一致しないことも明らかにした(BBRC, 2013)。以上のように一塩基多型、候補遺伝子解析の両面から緑内障感受性遺伝子を同定した。
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