低濃度(10 ug/ml)AGEが網膜神経病変に与える影響を解析するためラット網膜を3次元培養し、GCLにおけるTUNEL陽性率、再生突起数を比較検討した。使用したAGEはglucose-AGE-BSA、glycolaldehyde-AGE-BSA、glyceraldehyde-AGE-BSAの3種類である。また、細胞死メカニズムの解明のためapoptosis inducing factor (AIF)及び活性型caspase-9の免疫染色も追加検討した。培養7日において低濃度AGEは3種類ともGCLにおけるTUNEL陽性率を有意に増加させ、再生突起数を有意に減少させた。また、NT-4を付加するとTUNEL陽性率は有意に減少し、再生突起数は有意に増加した。ついでAIFの免疫活性はAGE負荷群で有意に増加し、免疫活性は主に核に観察された。AIFはミトコンドリアから放出された後、核に移行しcaspase非依存性にアポトーシスを誘導することからAIFはAGE誘導神経細胞死に関与していることが示唆された。同様に活性型caspase-9の免疫活性もAGE投与群で増加した。すなわちcaspase依存性経路も同時に活性化していることが示唆された。NT-4付加するとAIF、及びcaspase-9の免疫陽性率は有意に減少することから、NT-4はAIF、caspase-9の免疫活性を抑制することで神経保護、再生促進作用を発揮していることが示唆された。なお、3種類のAGE-BSAの間には特に有意差が見られず、従来から報告されているglyceraldehydeの毒性が他の2種類より強いという結果にはならなかった。AGEはRAGE依存性に神経毒性を発揮することが知られているが、今回の結果からむしろRAGE非依存性経路による細胞死誘導が主な網膜神経毒性メカニズムとして考えられた。
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