(1)前眼部フーリエドメインOCT(以下、FD-OCT)による隅角微細組織構造の同定 輸入摘出人眼の隅角部を前眼部FD-OCTの高解像度スキャンにて撮影することで、隅角部における房水流出経路として重要なシュレム管や線維柱帯の構造を非侵襲的に同定することが可能であった。シュレム管は空隙としてとらえられ、外科的拡張操作の前後にFD-OCTの撮影を行うことでシュレム管であることを確認した。 (2)正常人、狭隅角眼を対象とした前眼部画像データの解析 これまでに、正常人ボランティア30人60眼において、超音波生体顕微鏡(UBM)、前眼部FD-OCTによる隅角部画像データを取得し解析した。その結果、正常人眼60眼においてシュレム管は87.5%と高い頻度で同定できた。シュレム管の平均長径は347.2±42.3μm、線維柱帯の平均長径は466.9±60.7μm、線維柱帯の平均面積は0.0671±0.0058mm^2であった。さらに現在までに、原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障患者を含む狭隅角眼71例141眼でのデータも取得し解析を進めている。 (3)多数例の狭隅角眼の前眼部構造の経時的変化の検討 上述の狭隅角症例に関しては、今後も長期にわたり定期的な経時的データ取得を継続し、加齢による前眼部構造の変化を評価する予定である。 (4)前眼部FD-OCTによる隅角全周解析を用いた狭隅角眼における隅角閉塞領域の検討 狭隅角眼43眼において、緑内障につながる隅角閉塞の検出頻度を前眼部FD-OCTとUBMで比較した。象限単位ではUBMで明所下、暗所下にて各18.4%、44.1%で隅角閉塞が認められたのに対し、前眼部FD-OCTでは各72.4%、75.7%とより高率であり、高速、高解像で隅角全周の解析が可能な前眼部FD-OCTが、閉塞隅角緑内障の診断や発症メカニズムの解明に役立つことが示唆された。
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