眼圧は緑内障の最も大きなリスクファクターとされている。しかし、眼圧は日内変動するため、最も高い眼圧を知ることは容易ではない。眼圧の日内変動には、交感神経系や時計遺伝子が関与することが明らかになっているが、そのメカニズムについてはほとんど解明されていない。本研究では、交感神経系、時計遺伝子による眼圧日内変動の制御メカニズムを解明することを目的とした。眼圧は房水の産生と流出のバランスによって変動するが、房水の産生、分泌は毛様体上皮で行われる。このことから本年度は、ブタの毛様体上皮細胞の培養を確立し、毛様体におけるアドレナリン受容体、時計遺伝子の発現をmRNAレベルで解析した。 ブタの毛様体上皮細胞を分離し、培養した。色素上皮と無色素上皮の混合培養ではあるが、血清存在下で培養、増殖が可能であった。初代培養では、tight junction タンパクである zona occludin-1 に対する抗体により、培養された細胞が上皮細胞であることが確認された。 ブタ毛様体のpoly(A)+ RNAからRT-PCRにより、アドレナリン受容体(β1、β2)、時計遺伝子(Per1、Per2、Cry1、Cry2)、メラトニン合成の律速酵素であるアリルアルキルアミンN-アセチルトランスフェラーゼ(AA-NAT)について、mRNAの発現を検出した。上記の培養系の第2世代を用いて、非選択的アドレナリンβ受容体遮断薬であるチモロールによって、時計遺伝子発現の変化が見られるかどうか検討したが、変化は見られなかった。しかしながら、アドレナリンβ受容体作動薬であるイソプレテレノールを添加すると、Cry2、Per1のmRNA量が増加した。このことは、アドレナリン受容体が時計遺伝子の発現にかかわっている可能性を示唆している。
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