研究概要 |
本年は、長期間経過観察した境界明瞭な網膜神経線維層欠損(NFLD)を有する正常眼圧緑内障(NTG)における乳頭出血(DH)出現やNFLD角度の拡大と視野障害進行との関連について検討した。対象は境界明瞭なNFLDを有するNTG106例106眼。経過観察期間は9.1±2.0年(5.0~14.4年)であった。NFLD角度と視野障害の程度を検討した結果,NFLD角度が拡大するにつれ,MDは悪化した (r=-0.761,p<0.0001)。経過中に106眼中51眼(48.1%)にDHが出現、DH出現の平均回数は1.28±1.99回であった。MD変化量はDH(+)群:-2.61dB,DH(-)群:-1.14dBで,DH(+)群が有意に進行した(p=0.008)。MD slopeはDH(+)群:-0.30dB/year,DH(-)群:-0.13dB/yearで,DH(+)群は有意に視野障害進行速度が速かった(p=0.0027)。NFLD角度変化速度はDH(+)群で有意に急速にNFLDが拡大した(p<0.0001)。ベースラインMDと比較し、2回連続して3dB以上悪化した1回目をエンドポイントと定義した場合のDH出現有無別の視野異常生存率は,DH(+)群がDH(ー)群に比べ有意に進行した( p=0.0019)。DH(-)群の10年生存率は87%、DH(+)群の10年生存率は56%であった。DH回数とDHに一致するNFLD角度拡大速度の関係は、DH回数の増加に伴いNFLD角度の拡大が有意に速くなった (r=0.410, p<0.0001) 。NTGにおいてDH眼は非DH眼よりもNFLD拡大速度や視野障害進行速度が速く,かつ頻回なDHの出現がその両者を加速することが明らかとなった。
|