研究課題/領域番号 |
22591937
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
飯島 裕幸 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (80114362)
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研究分担者 |
桜田 庸一 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (90456476)
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キーワード | 網膜色素変性 / 静的自動視野計 / 網膜静脈分枝閉塞症 / 黄斑浮腫 / 中心性漿液性脈絡網膜症 / 光干渉断層計 / 視野感度 / LogMAR視力 |
研究概要 |
網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に伴う黄斑浮腫に対して、抗VEGF剤硝子体注射治療を行った際の視力経過、中心窩網膜厚の減少効果をグラフ化して、これらの経時変化に普遍的なパターンがみられることを明らかにした。さらに虚血型のBRVOでは、黄斑浮腫の遷延化の傾向は小さく、その結果、硝子体注射治療回数が少なくなることを現在、解析中である。 網膜色素変性の多数例において、発症後経過年数で表現した罹病期間と視野感度減少が相関すること、視野感度と経過年数は、中心窩の形態覚である矯正視力と経過年数よりも高い相関を有し、本症の進行評価には視野感度が有用であることを明らかにした。さらに、ハンフリー10-2視野検査を10年以上の長期にわたって記録してきている39例の右眼39眼について解析し、矯正視力よりも視野感度である平均偏差(MD)のほうが良好な進行モニターとなること、中心10度以内の距離別平均感度で評価すると、MDでは明らかな進行を示すことができない症例でも、距離別平均感度では進行を示すことができることを明らかにした。この結果は網膜色素変性の治療法の評価を行う上で有用な知見である。現在論文投稿中である。 中心窩機能として、形態覚である視力と光覚である中心窩感度(実際の視野測定では中心窩閾値と表現される)との関係を、異なる病態メカニズムで黄斑が肥厚する3種類の疾患、すなわち網膜前膜、網膜静脈閉塞症黄斑浮腫、中心性漿液性網脈絡膜症の3者で検討した。視力と中心窩感度はそれぞれの疾患で比較的良好な相関を示したが、中心性漿液性網脈絡膜症では視力に比較して光覚である中心窩感度が有意に低下していることが明らかとなった。このことは本症患者が中心視野の暗さを訴える臨床経験を支持するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網膜静脈分枝閉塞症の黄斑浮腫治療に伴う改善と再発の経過を、視力と網膜厚の両面から明らかにして、この疾患での客観的評価システムはほぼ完成した。網膜色素変性に関しては機能面で視野感度、とりわけ中心窩からの距離別平均感度の推移をみれば、疾患の進行を客観的に評価することが可能であることを明らかにした。形態面での経過評価が残る課題である。
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今後の研究の推進方策 |
網膜静脈分枝閉塞症における視野感度に関して、特に虚血部位での視野感度低下が進行するかどうか、また虚血の程度に関連してどの程度低下するのかが残る課題で、現在解析中である。 網膜色素変性に関しては機能的進行経過の評価に静的自動視野計でのMDや中心からの距離別平均感度がよい指標となることは明らかだが、形態的指標として、光干渉断層計にての外顆粒層厚、外節厚などが評価対象として適切か否かが今後の課題で、現在検討中である。
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