網膜疾患の臨床研究では、中心窩の機能である視力が主要な評価対象であった。本研究では黄斑あるいは後極部網膜全体の機能を反映するハンフリー静的自動視野計による中心10度または30度の視野感度評価の重要性を、網膜色素変性と網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)において示すことに成功した。 網膜色素変性についてはすでに、視力よりも視野感度が進行をモニターする上ではるかに有用であることを明らかにしている。しかし、著しく視野が狭窄した患者さんにとっては、0。5以上の視力をいつまで維持できるかが、生活の質(QOL)あるいは視覚の質(QOV)を維持する上で重要な情報となる。そこで10年以上経過観察されている本症39眼について、中心10度視野での平均偏差(MD)に加えて、中心からの距離別9グループの平均視野感度のそれぞれについて進行速度と視力との関係を明らかにした。その結果、中心からの距離が1。4度の4点の平均感度であるMS1。4が進行モニターにもすぐれ、視力と最も相関していることが明らかとなった。本指標は視力維持を目的とする本症の治療研究において有用な指標となる。 BRVOにおいては、出血が吸収した時点での網膜毛細血管閉塞野(NPA)の評価が視機能、特に視野感度に影響することを明らかにした。ハンフリー中心30-2視野の測定ポイントに対応する眼底各部位のNPAが視野感度と有意に相関することを明らかにし、視野検査にてNPAの程度と広さ、すなわち網膜虚血程度を推測できるという臨床的メッセージの有効性を確認した。またNPAが広いほど、黄斑浮腫治療目的の抗VEGF抗体硝子体注射後の再発が少ないことも明かにした。
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